Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんせつ

春雪

久生 十蘭

Lesen Sie 春雪 (しゅんせつ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.672 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

君はいちど顔を見ているはずだと、柚子さんがいっていたがね」

あの朝、京浜国道をトラックに乗ってやってきた男なんだろうと、池田にも、すぐ察しがついた。

「心あたりはある。しかし、君はどうしてそんなことを知っているんだ」

「柚子さんが、なにもかも、うちあけた」

「柚子が君のところへ行ったのは、どういうわけなんだい」

「ロバート君は、いぜん、うちの工場へ使役に来ていたことがある。やはり俘虜なんだが、隊付牧師のハンプ君というのと、二人をひっぱって材料をとりに行ったことがある。柚子さんは、それをどこかで見ていたのだろうが、よくよく困ったとみえて、おれのところへ相談にきた。このあいだいっしょに工場から出て行ったあの若いひとは、もう島の収容所にいないようだが、どこへ行ったか探す方法はないだろうか……話をきいてみると、ロバート君が横浜へ荷役に行っていた間、たがいにチラと眼を見あわせたいだけのために、半年近くも、毎朝、山下橋の袂に立っていたというんだ」

伊沢は火をつけたばかりの葉巻を、灰皿のうえに投げだすように置くと、

「柚子さんは、トラックに乗ってくる名も国籍も知れない男に惚れて、惚れて惚れて、仕方がなくなって、理でも非でもかまわない、敵であろうが味方であろうが、情のいたるところ、いかんとも忍びがたし……さぁ、どうでもしろという