Japanische Klassiker mit Furigana
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はる
春
岡本 かの子
Lesen Sie 春 (はる) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.864 Zeichen · 48 Bildschirme
夏など茶絣の白上布に、クリーム地に麻の葉の単衣帯。それへプラチナ鎖に七宝が菊を刻んだメタルのかかった首飾りをして紫水晶の小粒の耳飾りを京子はして居た。その京子は内気で何か言おうとしても中々声が出ないのだ。(気違いになってから京子は却ってよく話し出した)出る声は慄え勝ちで、よくぱっと顔が赫くなった。めったに人と口を利かない割合に気位が高かった癖に、よくも三度も結婚する程、男ばかりには乗ぜられたものだ。加奈子は黙ってそれを看過して居たのだ。「美しい花は動き易い」と、つまりは観賞一方だった。京子が親も財産も男も失くして気違いになってから、俄かに加奈子の心がむき出しに京子に向った。寒い、喰べもののまずい病院から引き取って世話をしたと言ったまででは、極々当りまえの世話人根性のようだけれど、その実、気違いの京子と暮す事は何という気遣いな心の痛む事業だろう。それに此頃のように、恥も外聞もなく異性憧憬症にかかった京子にかかわることは、自分の恥しさに触れられるようで、たとえばお民とか、良人とか、今の巡査とかの限られた人達でなく、おおげさに言えば、何か天地の間の非常な恥しいことに触れて居る自分を、天地の間の誰にでも見られて居るようで、非常に辛くて堪らない。