Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.663 Zeichen · 97 Bildschirme
堺屋は今から三十年前の火事に古い帳面を焼いてしまって、その以前の分は一冊も残っていない。店にあらん限りの古い帳面を調べても、三十年前が行き止まりであった。おじさんは行き止まりに突きあたるまで調べ尽そうという意気込みで、煤けた紙に残っている薄墨の筆のあとを根好くたどって行った。
帳面はもちろん小幡家のために特に作ってあるわけではない。堺屋出入りの諸屋敷の分は一切あつめて横綴じの厚い一冊に書き止めてあるのであるから、小幡という名を一々拾い出して行くだけでも、その面倒は容易でなかった。殊に長い年代にわたっているのであるから、筆跡も同一ではない。折れ釘のような男文字のなかに糸屑のような女文字もまじっている。殆ど仮名ばかりで小児が書いたようなところもある。その折れ釘や糸屑の混雑を丁寧に見わけてゆくうちには、こっちの頭も眼もくらみそうになって来た。
おじさんもそろそろ飽きて来た。面白ずくで飛んだ事を引受けたという後悔の念も兆して来た。
「これは江戸川の若旦那。なにをお調べになるんでございます」
笑いながら店先へ腰を掛けたのは四十二三の痩せぎすの男で、縞の着物に縞の羽織を着て、だれの眼にも生地の堅気とみえる町人風であった。