Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.865 Zeichen · 432 Bildschirme
「早く暇をお取んなさいよ。津の国屋は潰れるから」
びっくりして見返ると、その女の姿はもう見えなかった。お松は急に怖くなって息を切って逃げて帰った。主人にむかって真逆にそんなことを打ち明けるわけにも行かないので、彼女は朋輩のお米にそっと話すと、お米は又それを店の者どもに洩らした。店の者ばかりでなく、女湯へ行ってもお米はそれを近所の人達に話した。それがまた町内の噂の種になった。
いつの代にも、すべてのことが尾鰭を添えて云い触らされるのが世間の習いである。まして迷信の強いこの時代の人たちは、こうした忌な噂がたびたび続くのを決して聞き流している者はなかった。噂はそれからそれへと伝えられて、津の国屋には死霊の祟りがあるということが、単に湯屋髪結床の噂話ばかりでなく、堅気の商人の店先でもまじめにささやかれるようになって来た。
あしたが草市という日に、お雪はいつものように文字春のところへ稽古に来た。丁度ほかに相弟子のないのを見て、彼女は師匠に小声で話した。
「お師匠さん。おまえさんもお聞きでしょう。あたしの家には死霊の祟りがあるとかいう噂を……」
文字春はなんと返事をしていいか、少しゆき詰まったが、どうも正直なことを云いにくいので、彼女はわざと空とぼけていた。