Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.865 Zeichen · 432 Bildschirme
半七捕物帳
一
ある年の正月、門松のまだ取れないうちに赤坂の家をたずねると、半七老人は格子の前に突っ立って、初春の巷のゆきかいを眺めているらしかった。
「やあ、いらっしゃい。まずおめでとうございます」
いつもの座敷へ通されて、年頭の挨拶が式のごとくに済むと、おなじみの老婢が屠蘇の膳を運び出して来た。わたしがここの家で屠蘇を祝うのは、このときが二度目であったように記憶している。今とちがって、その頃は年礼を葉書一枚で済ませる人がまだ少なかったので、表には日の暮れるまで人通りが絶えなかった。獅子の囃子や万歳の鼓の音も春めいてきこえた。
「麹町辺よりこちらの方が賑やかですね」と、わたしは云った。
「そうでしょうね」と、老人はうなずいた。「以前は赤坂よりも麹町の方が繁昌だったんですが、今ではあべこべになったようです。麹町も赤坂も、昔は山の手あつかいにされていた土地で、下町にくらべるとお正月気分はずっと薄かったものです。川柳にも『下戸の礼、赤坂四谷麹町』などとある。つまり上戸は下町で酔いつぶれてしまうが、下戸は酔わないから正直に四谷赤坂麹町まで回礼をしてあるくわけで、春早々から麹町や赤坂などの年始廻りをしているのは野暮な奴だというようなことになっていたんです。