Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.865 Zeichen · 432 Bildschirme
津の国屋の初七日が過ぎて三日の夜であった。文字春は芝のおなじ稼業の家に不幸があって、その悔みに行った帰り途に、溜池の縁へさしかかったのはもう五ツ(午後八時)を過ぎた頃であった。津の国屋といい、今夜といい、とかくに忌なことばかり続くので、文字春もいよいよ暗い心持になった。早く帰るつもりであったのが思いのほかに時を費したので、暗い寂しい溜池のふちを通るのが薄気味が悪かった。今日と違って、山王山の麓をめぐる大きい溜池には河獺が棲むという噂もあった。幽霊の娘と道連れになったことなどを思い出して、文字春はぞっとした。月のない、霜ぐもりとでも云いそうな空で、池の枯蘆のなかでは雁の鳴く声が寒そうにきこえた。文字春は両袖をしっかりとかきあわせて、自分の下駄の音にもおびやかされながら、小股に急いで来ると、暗い中から駈けて来た者があった。
避ける間もなしに両方が突き当ったので、文字春はぎょっとして立ちすくむと、相手はあわただしく声をかけた。
「早く来てください。大変です」
それは若い女、しかも津の国屋のお雪の声らしいので、文字春はまた驚かされた。
「あの、お雪さんじゃありませんか」