Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.865 Zeichen · 432 Bildschirme
ある者は暗闇で足をすくわれた。ある者は襟首を引っ掴んでほうり出された。こういう奇怪な伝説をたくさん持っている化け銀杏の下に立ったときに、忠三郎は急に薄気味悪くなった。昼間は別になんとも思わなかったのであるが、寒い雨の宵にここへ来かかって、かれの足は俄かにすくんだ。しかし今更引っ返すわけにも行かないので、彼はこわごわにその樹の下を通り過ぎようとする途端である。氷のような風が梢からどっと吹きおろして来たかと思うと、かれのすくめた襟首を引っ掴んで、塀ぎわの小さい溝のふちへ手ひどく投げ付けた者があった。忠三郎はそれぎりで気を失ってしまった。
風は再びどっと吹きすぎると、化け銀杏は大きい身体をゆすって笑うようにざわざわと鳴った。
二
「もし、おまえさん。どうしなすった。もし、もし……」
呼び活けられて忠三郎は初めて眼をあくと、提灯をさげた男が彼のそばに立っていた。男は下谷の峰蔵という大工で、化け銀杏の下に倒れている忠三郎を発見したのであった。
「ありがとうございます」
云いながら懐中へ手をやると、主人から別に渡された百両の金は胴巻ぐるみ紛失していた。驚いて見廻すと、抱えていた一軸も風呂敷と共に消えていた。