Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.744 Zeichen · 434 Bildschirme
市子は梓の弓を鳴らして、生霊や死霊の口寄せをするもので、江戸時代の下流の人々には頗る信仰されていたのである。その市子が草にうもれた古祠のかげから突然にあらわれたのは、白昼でも何だか気味のいいものでは無かった。二人は黙って見ていると、女の方から声をかけた。
「もし、おまえさん方は何か探し物でもしていなさるのか」
「ええ、落とし物をしたので……」と、幸次郎はあいまいに答えた。
「おまえさん方の探す物は、ここらでは見付からないはずだ」と、老女は笑いながら云った。「もっと西の方角へ行かなければ……」
市子は占い者や人相見ではない。その口から探し物の方角などを教えられても、恐らく信用する者はあるまい。まして半七らがその忠告をまじめに聴くはずはなかった。
「いや、ありがとう」と、幸次郎も笑いながら答えた。
それぎりで、二人は往来の方へあるき出すと、老女はそのあとを慕うように続いて来た。二人も無言、彼女も無言である。草をかき分けて往来へ出て、二人は左へむかって行くと、彼女もおなじく左へむかって来た。彼女はなかなか達者であるらしく、わずかに一間ほどの距離を置いて、男のようにすたすたと歩いて来る。