Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.744 Zeichen · 434 Bildschirme
二人はそれから二つ三つ話して床几を起った。
「では、きっと頼みますぞ」と、侍は云った。
「はあ」と、歩兵の返事はやはり渋っていた。
「米吉が不安心なら、今度は手前から直々にお渡し申しても宜しい」
「はあ」
かれらは一緒に連れ立って行くことを厭うらしく、侍はひと足さきに別れて出て、吾妻橋の方角へ真っ直ぐに立ち去った。歩兵は後に残って、暫くぼんやりと考えていたが、やがて立ち上がって表へ出た。桜の青葉を洩れて来る真昼の日のひかりを、彼はまぶしそうに仰ぎながら、堤のむこうへ下りて竹屋の渡しへむかった。
侍も歩兵も笠を脱がなかった。知らない人が聴いたならば、これだけの対話にさしたる秘密を含んでいるとも思われなかったであろうが、その秘密をぬすみ聴く四つの耳があった。頬かむりをした二人の男が掛茶屋のうしろからそっと姿をあらわした。それは半七と亀吉であった。
「あの侍を知らねえか」と、半七は小声で訊いた。
「知りませんね」と、亀吉は答えた。「歩兵は確かに鮎川ですよ」
「米吉が不安心なら、直々に渡してもいいと云っていたな」
「米吉というのはお房の兄貴ですよ」
「そうだ」
「もう少し歩兵を尾けてみましょうか」