Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんきく
晩菊
林 芙美子
Lesen Sie 晩菊 (ばんきく) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.998 Zeichen · 32 Bildschirme
夕方、五時頃うかがいますと云う電話があったので、きんは、一年ぶりにねえ、まア、そんなものですかと云った心持ちで、電話を離れて時計を見ると、まだ五時には二時間ばかり間がある。まずその間に、何よりも風呂へ行っておかなければならないと、女中に早目な、夕食の用意をさせておいて、きんは急いで風呂へ行った。別れたあの時よりも若やいでいなければならない。けっして自分の老いを感じさせては敗北だと、きんはゆっくりと湯にはいり、帰って来るなり、冷蔵庫の氷を出して、こまかくくだいたのを、二重になったガーゼに包んで、鏡の前で十分ばかりもまんべんなく氷で顔をマッサアジした。皮膚の感覚がなくなるほど、顔が赧くしびれて来た。五十六歳と云う女の年齢が胸の中で牙をむいているけれども、きんは女の年なんか、長年の修業でどうにでもごまかしてみせると云ったきびしさで、取っておきのハクライのクリームで冷い顔を拭いた。鏡の中には死人のように蒼ずんだ女の老けた顔が大きく眼をみはっている。化粧の途中でふっと自分の顔に厭気がさして来たが、昔はエハガキにもなったあでやかな美しい自分の姿が瞼に浮び、きんは膝をまくって、太股の肌をみつめた。