Japanische Klassiker mit Furigana
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くらがりのおとまつ
暗がりの乙松
山本 周五郎
Lesen Sie 暗がりの乙松 (くらがりのおとまつ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.992 Zeichen · 25 Bildschirme
――これが今、嘉兵衛の話していた野村屋という借金取りであろう。
「今晩は、お約束で野村屋から参りました」
「おおこれは御苦労さんで」
嘉兵衛は急いで起上った、「さっきからお待ち申していました、いま出しますで、どうかそこへお掛けくだせえまし」
「お敷きなさって」
と妻の押しやる座蒲団へ、野村屋の手代は会釈しながら腰を下した。――嘉兵衛は疲れた足取で仏間のほうへ去る、と間もなく……どしんというひどい物音がして、
「た、た、大変だっ」
と嘉兵衛の凄じい悲鳴が起った、「お稲、お稲、ちょっとここへ来う!」
「あい、どうしただか」
娘が厨から転ぶように走って来た。
「汝ゃあ、こ、こけえ手をつけやしねえか」
「いんえ寄りもしねえだよ」
妻のお秀が不安に戦きながら乗出した。
「お父つぁん、どうしただね」
「金が、金が無えだ、ここへ納っといた金が無くなってるだ。この仏壇の抽出へ入れて、上へ過去帳を載せて置いたことまでちゃんと覚えているだに――あ、そういえばここへ過去帳が落ちてるだぞ」
「げえっ! それじゃあ……」
妻も娘も仰天して声を呑んだ。
嘉兵衛は狂気のように部屋の中を走り回った。