Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くらがりのおとまつ

暗がりの乙松

山本 周五郎

Lesen Sie 暗がりの乙松 (くらがりのおとまつ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.992 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

五

これで――今夜来る野村屋の借金を返し、あとの残りで作るぐれえの田地は取返せるだ、これから親娘三人が精一ぺえ働いて、一日も早くお絹を請出そうしまた、お稲と茂吉つぁんの祝言もあげる段取もつけるべえさ、何もかもこれから良くなるだぞ、分っただか、お秀よ」

嘉兵衛は悲しみの中にも、新しい希望を妻に与えようとして笑顔をみせた。

五

このありさまが手に取るように見える、せきあげる夫婦の声さえ痛いほど耳へ入ってくる杉林の中で、――三次は堪らず、

「親分、もうたくさんだ」

と音をあげた、「もうたくさんだ親分、どうか逃げさしておくんなさい」

「弱音を吐くな」

梅田屋は三次の腕を掴んで、「芝居はこれから面白くなるんだ。見ろ、蛙の遠音に宵月、書割からして本註文だ、まあ落着いてとっくり見物しねえ」

「だ、だってあっしゃあもう」

「うるせえ、いっぱし商売人になろうてえ者が、こんな愁嘆場に咽せてどうするんだ、そんな度胸で暗がりの乙松の子分になれると思うのか」

「――へえ」

ぐいと掴みあげる梅田屋の腕力に、三次は詮方なく顔を振向けた。

二人が問答をしているあいだに、提燈を持った中年の男が一人、この家の縁先へ訪れていた。