Japanische Klassiker mit Furigana
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きそがわ
木曾川
北原 白秋
Lesen Sie 木曾川 (きそがわ) von 北原 白秋 (きたはらはくしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.659 Zeichen · 52 Bildschirme
絵本をひろげていた時にもこの子は一個の独自の存在であった。食堂のテーブルに向い合った僅な時間のひまにも、この子はおぼつかないながら、ナイフとフオクとは確に自分の物として、焼きたてのパンや黄色いバタや塩っぱいオムレツの上にのぞんで、決して自分を取り乱さなかった。箱根の嶮路にかかって、後部の大きな硝子戸に、機関車がぴったりとくっつき、そのまま轟々と真っ黒い正面をとどろかして押し昇った時にもそれを見たこの子は、それこそひとりで大喜びであった。その夕方、名古屋の親戚の家の玄関に立った時にも、別に鼻白みもしなかった。彼が生れた日だけしか彼を見なかったその伯母さんが「ほう、おまえが隆坊。まあ大きくなりましたね、おお。よく似ているわね、うちの子に。ほほほ」。
よくまあお父さんについて来られましたね、と驚いて、その式台で微笑された時にも、この子はうんとだけいって笑った。そうして自分で靴をぬぐとすぐに飛び込んで行った。生みの母に初めて離れて遠い旅に出るこの子に、この子の母はよくいってきかした。「ね、坊や。自分のことはみんな自分でするのですよ」。
だから、その晩にも、かれはひとりで必死になって上衣を脱いだり、パンツや、シャツの釦をはずしたり、寝衣に着更えたり、帯を結んだり、寝床にころがったり、眠ったりした。