Japanische Klassiker mit Furigana
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とうじょうき
東上記
寺田 寅彦
Lesen Sie 東上記 (とうじょうき) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.356 Zeichen · 17 Bildschirme
手洗い口すゝぎなどするうち空ほの/″\と明けはなれたるが昨夜の雨の名残まだ晴れやらず、蚊帳をまくる風しめっぽきも心悪からず。膳に向かえば大野味噌汁。秋琴楼に仮寓の昔も思い出さしむ。勘定をすませ丸く肥え太りたる脊低き女に革鞄提げさして停車場へ行く様、痩馬と牝豚の道行とも見るべしと可笑し。この豚存外に心利きたる奴にて甲斐々々しく何かと世話しくれたり。間もなく駆け来る列車の一隅に座を構えて煙草取り出せばベルの音忙しく合図の呼子。汽笛の声。熱田の八剣森陰より伏し拝みてセメント会社の煙突に白湾子と焼芋かじりながらこのあたりを徘徊せし当時を思い浮べては宮川行の夜船の寒さ。さては五十鈴の流れ二見の浜など昔の草枕にて居眠りの夢を結ばんとすれどもならず。大府岡崎御油なんど昔しのばるゝ事多し。豊橋も後になり、鷲津より舞坂にかゝる頃よりは道ようやく海岸に近づきて浜名の湖窓外に青く、右には遠州洋杳として天に連なる。漁舟江心に向かいてこぎ出せば欸乃風に漂うて白砂の上に黒き鳥の群れ居るなどは『十六夜日記』そのままなり。浜松にては下りる人乗る人共に多く窮屈さ更に甚だしくなりぬ。