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Japanische Klassiker mit Furigana

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びわのはな

枇杷の花

永井 荷風

Lesen Sie 枇杷の花 (びわのはな) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.769 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

枇杷の実はわたくしが始めて心づいたその翌日には、早くも一粒をも残さず、近処の蝉取りに歩く子供等の偸み去るところとなった。夏は去って蝉は死し、秋は尽きて虫の声も絶え、そして忽ち落葉の冬が来た。わたくしは初めて心を留めて枇杷の枝に色なき花のさき出るのを眺め、そして再びその実の熟する来年のことを予想した。今年も今は既に十一月の末になっている。

わたくしは枇杷の花を見ると共に、ふと鳥居甲斐守の逸事を憶い出した。鳥居甲斐守は老中水野越州が天保改革の時、江戸町奉行の職に在り、一世の怨を買って、酷吏と称せられた人である。名は燿蔵、諱は忠輝、号を胖庵といい、祭酒林述斎の第二子である。弘化二年十月罪を獲て改易となり、その身は讃州丸亀の領主京極氏の藩中に禁固せられた。時にその年五十歳であった。歳月は匆々として過ること二十五年、明治戊辰の年となって、徳川氏は大政を奉還したので、丸亀藩では幕府の罪人を預って之を監視する義務がなくなった所から、甲斐守の罪を許して江戸に放還しようとした。然るに甲斐守は頑として之を聴かず、おのれは徳川氏の臣にして罪を幕府に獲たのである。幕府より赦免の命を受くるに非らざれば私に配所を去るわけにはゆかないと言った。