Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くわのきものがたり

桑の木物語

山本 周五郎

Lesen Sie 桑の木物語 (くわのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.815 Zeichen · 79 Bildschirme

Aozora Bunko

「――生きられる限り生きよう、おまえの云うとおり、大事なのは生きることだ、悠二郎、――おまえだけは、どんなことがあってもおれから離れて呉れるな」

「どんなことがありましても」悠二郎は証しを立てるように云った。

「――この世は申すまでもなく、あの世へも、決してお側を離れは致しません」

正篤が手を伸ばした。その手を悠二郎は両手で受けた。雨は少しのやみまもなく、しんしんと庇を打っていた。

医者の云ったとおり正篤の病気は順調によくなり、五月中旬にはとこばらいをした。そうして医者の進言もあり正篤の望みで、すぐ下屋敷へ静養のために移った。――まえのことがあってから、正篤はもう憂鬱なようすをみせず、寧ろ起ち居は元気になり、顔つきも明るく大胆になった。下屋敷へ移って四五日すると、

「悠二郎、暗くなったらでかけるぞ」

こう囁いて、その日初めて、夜になって屋敷をぬけ出した。もう年も十八であるし、任官した藩主であったから、ぬけ出すにも以前ほど周囲の者に気をつかう必要はない。しかし正篤はそれでいい気になるというふうはなく、二日おき三日おきくらいにでかけ、夜もあまり更けないうちにきちんと帰った。