Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
「一時はもうお前さんを御断りしようかと思う位だったよ……」
その言葉の調子は優しくも急所に打込む細い針のような鋭さが有った。捨吉は紅くなったり蒼くなったりした。
「兄さん」
と広い勝手の上り口から捨吉を見つけて呼んで入って来たのは、田辺の家の一人子息だ。弘と言って、捨吉とはあだかも兄弟のようにして育てられて来た少年だ。
「このまあ暑いのに帽子も冠らないで、何処へ遊びに行ってるんだねえ」
と細君は母親らしい調子で言った。この弱かった細君にどうしてこんな男の児が授かったろうと言われているのが弘だ。一頃は弘もよく引付けたりなどしたが、お婆さん始め皆の丹精でずんずん成長って、めっきりと強壮そうに成った。おまけに、末頼もしい賢さを見せている。
お婆さんは茶戸棚のところに行って、小饅頭などを取出し、孫と捨吉とに分けてくれた。
「弘、写真を持って来て兄さんにお目にお掛けな」
と細君は弘を側に呼んで、解けかかった水浅黄色の帯を締直して遣った。弘が持って来て捨吉に見せた写真は、父と一緒に取ったのと、一人のとある。界隈の子供と同じように弘もいくらか袖の長い着物で写真に映っていたが、その都会の風俗がいかにもよく似合って可愛らしく見えた。