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Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

金網を張った明り窓の重たい障子を開けて僅かに物を見ることが出来た。そこで捨吉は行李の蓋を開けていると、お婆さんも何かの捜し物に梯子段を登って来た。

お婆さんは暗い隅の方から取出したものを窓の明りに透かして見て、

「捨さん、これはお前さんの夏服だよ」

と捨吉に見せた。それは彼が一時得意にして身に着けたものだ。

「これもお前さんのズボンだろう」

とお婆さんは復た派手な縞柄のを取出して来て捨吉に見せた。窓から射す幽かな弱い光線でも、その薄色のズボン地を見ることが出来た。捨吉は脱ぎ捨てた殻でも見るように、自分の着た物を眺めて立っていた。

「あれも要らない、これも要らない、お前さんは何物も要らないんだねえ――まあ、この洋服はこうして蔵って置こう――今に弘でも大きく成ったら、着せるだ」

とお婆さんはその夏服の類を元の暗いところへ蔵いながら言った。

この土蔵の二階から捨吉が用意するだけの衣類を持って、お婆さんと一緒に奥座敷の方へ下りた時は、主人も弘も見えなくて細君だけ居た。お婆さんは土蔵から取出して来たものを細君に見せて、

「米、これかい」

と聞いた。それは細君の好みで病中に造った未だ一度も手を通さない単衣であった。