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Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

もっともっと胸一ぱいに成るようなものを欲しい。そう思って見ると、堤を切って溢れて行くような「チャイルド・ハロルド」の巡礼なぞの方に、捨吉は深く心を引かれるものを見つけた。青い麦の香を嗅ぐようなバアンズの接吻の歌も、自分の国の評判な俳優が見せてくれる濡幕にも勝って一層身に近い親しみを覚えさせた。彼はまた詩人ギョエテの書いたものを通して、まだ知らなかったような大きな世界のあることを想像し始めた。

十一月も近くなって、岸本は兄から来た葉書を受取った。

「国許より母上上京につき、明土曜日には帰宅あれ。母上はお前を待つ。尤も今回はそう長く滞在してもいられない筈だ」とある。

「お母さんが来た」

思わずそれを言って見た。――国の方のことも捨吉は最早大分忘れて了った位だ。お母さんと一緒に田舎で留守居する姉さんや、一人の家僕なぞのことが僅かに少年の記憶を辿らせる。思えば東京へ遊学を命ぜられて大都会を見ることを楽みに、兄に連れられて出て来た幼かった日――

捨吉はしばらくお母さんへ手紙も書かなかった。お母さんからのは、いつも姉さんの代筆で、無事で勉強しているか、こちらも皆な変りなく留守居をしている、憚りながら御安心下さいというような便りを読む度に、捨吉は何と言って返事を書いて可いのか、それすら解らないほど国の方のことは遠く茫然