Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
規律が僅かでも保たれているのは本隊付近ばかりで、それを一寸外れると此の漠々たる密林の中には、支柱を失った兵たちが修羅のように青ざめてさまよい歩くらしかった。その事は部下の兵などから聞き知っていたけれども、まのあたりに見た此の光景は、ある予感を伴って、宇治に堪え難く重くかぶさって来た。宇治はもとの部屋に戻って来ると柱によりかかり、大きく息をついた。その時気がついたのだが、奥の部屋からは既に屍臭に似た臭いが立ち始めていたのだ。疲労が肩に重かった。背骨の芯がズキズキと痛んだ。身体の節々がしびれるようであったが、その癖身体の内側が変に熱っぽかった。柱によったまま宇治はしずかに目を閉じた。
今朝の出発時の、逃亡の新鮮な意図が次第に重苦しい不快なものに変って来ているのを彼は感じた。今朝はまだ氷を力まかせに踏み破るような切ない喜びがあった。久しく欝屈したものが出口を見つけてほとばしるような気持であった。サンホセに入って一箇月間、絶えず求めていた逃亡の機会を、今朝はじめてはっきり掴んだと思ったのだが、あるいはそれが錯覚ではなかったか。昨夜高城の報告を聞いたとき、花田の現在の在り様が俄かに鮮かな感じで彼の眼底に浮んで来た。