Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
枕崎で車を降りた。五郎は空腹を感じた。機上食と、鹿児島でうどんを少量。口にしたのはそれだけで、車で長いこと揺られて来た。日はまだ高い。緯度の関係で、日没は東京より一時間ほど遅いのだ。しかし空腹はそのためだけでない。病院の安静の一日と違って、今日は大幅に動き廻った。何か食べましょうや、と丹尾は話しかけた。さっきの激情から、やっと自分を取戻したらしい。
「宿屋の飯を食うほど、ばかげたことはない。それがセールスマンの心がけですよ」
トランクを提げて、先に歩き出した。後姿はずんぐりして、いかにもこのなまぐさい街の風物にぴったりだ。トランクだけが独立した生物のように上下動する。
〈SN氏のトランク、か〉
五郎の頬に隠微な笑いが上って来る。何もかも間違いだらけだ。おれも、あのトランクも、ここに来るべきじゃなかったのではないか。しかしすぐに笑いは消えてしまう。
今まで車で眺めて来たいくつかの小部落は、緑の樹々の間に沈んでいた。小川がそばを流れていた。今見る枕崎の街は、ほとんど木がない。むき出しにした木造家屋だけである。かろうじて柳の街路樹があるが、幹の太さが手首ぐらいで、潮風にいためられてか葉もしなびている。