Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

まことにそれは眩暈のするようないやな臭気であった。

〈イヤだな。ああ、イヤだ〉

五郎はそう思いながら、漁家の方に近づいて行った。水汲場があり、中年の女がせっせと洗濯をしている。五郎はふと放心して、その傍に立ちどまり、洗濯の様子を眺めていた。盥の中にあるのは、厚ぼったい刺子である。女は五郎を無視して、しきりに手を動かしていた。女の顔や手や足は、日焼けして黒かった。ぶつぶつ呟いている。

「だめだ。どうしてもだめだ。このままじゃ、だめになってしまう」

そんな風に聞えた。同じことを繰返し、繰返しして呟いている。砂浜には誰の姿も見えなかった。白い犬が一匹、網のそばに寝そべっているだけだ。

〈へんだな〉

五郎は思った。何がへんなのか、自分でもよく判らなかった。人気のないのがへんなのか、自分がここに立っているのがへんなのか、そこがぼんやりしている。やがて五郎は気がついた。彼が眺めているのは、腕や洗濯物でなく、女の脚であった。膝までしかない着物を着ているので、つやつやした浅黒い脚の全貌が見えた。五分ほど経って、五郎は耐えがたくなり、話しかけた。

「小母さん」

女はびっくりしたように呟きをやめ、五郎を見上げた。