Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
それまで五郎が傍に立っていることに、女はあきらかに気付いていなかった。
「何だね?」
女はとげのある声で答えた。
「あたしゃムシムシしてんだよ。あんまり気やすく話しかけないでお呉れ」
「ぼく、追っかけられているんです」
「誰に? 警察にかい? 悪いことをすれば、追っかけられるのは、あたりまえだよ」
「いいえ。違います」
五郎は懸命に弁解した。
「悪者に追っかけられているんです」
「悪い者なんか、この世にいるもんかね」
女はいらだたしげに言いながら、力んで脚をひろげるようにした。五郎はまぶしくて、思わず視線を海の方にそらした。水平線には黒い雲がおどろおどろと動いていた。そのために舟が出ないのだと、五郎は思った。
「いや」
女は言いそこないに気がついた。
「悪くないやつなんて、この世にいてたまるもんかね」
「だから、かくまって下さい」
「だから? だからだって?」
女はびっくりしたように立ち上って、眼を五郎に据えたまま、刺子をしぼり始めた。刺子はまだ汚れはとれていなかった。厚ぼったい刺子は、しぼりにくそうなので、五郎が手伝おうとすると、女は邪慳にその手を払いのけた。
「余計なこと、しないどくれ」