Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
〈まだ大丈夫だ〉
五郎は沖をにらみながら思う。
〈まだその手には乗らないぞ〉
彼はなおも福のことを考えていた。おれは福に友情を感じていたのか。いや。感じていなかった。あるとすれば、奴隷としての連帯感だけだ。それ以外には何もない。それはあの精神科病室の四人(五郎も含めて)のつながり方に似ている。神経が病んでいるという点だけが共通で、あとのつながりは何もない。たまたま同室に入れられ、会話したり遊んだりするが、それだけのことだ。
〈あのチンドン爺さんは面白いなあ〉
内山という六十ぐらいの太った爺さんで、街でチンドン屋に会うと気分が変になり、入院して来るのだ。チンドン屋を見ると、なぜ変になるのか。一歩踏み込むと判りそうな気がするのだが、その一歩が踏み込めない。爺さんにも判っていないらしい。一度訊ねたことがある。爺さんは答えた。
「わしにも判らんがね、なんか気分がおかしくなるんだ」
「おかしなもんだね」
「うん。おかしなもんだ」
ある日五郎は、大正エビと電信柱と共謀して、三人でチンドン屋の真似をしたことがある。爺さんがどんな反応を示すか、知りたかったのだ。思えば危険で残酷な試みであった。