Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
が、ついに決然と乗ってしまった。坐して迎えを待つのは、やはりいやだったのである。
彼は窓ぎわに腰をおろし、外の景色を眺めていた。しばらく平野を走り、しだいに高地へ登って行く。右側に時々白川が見える。大体白川に沿って汽車は走っているらしい。発電所が見え、大きな滝が見え、火山研究所の建物が見える。天気は昨日につづいて好かった。風もない。阿蘇中岳の火口から、白い煙が垂直に上っている。
昨夜の一時的の躁状態(と言えるかどうか)の反動で、五郎の気分は重く淀んでいた。彼は脱出した病院のことを考えていた。電信柱もチンドン屋も大正エビも、相も変らずベッドに寝そべっているだろう。いなくなった五郎のことなど、もう忘れたかも知れない。彼は今一番興味をもって思い出せるのは、診察室や廊下で顔を合わせるエコーラリイの患者である。その男はまだ三十にならぬ青年だ。病人は多少とも卑屈になり、おどおどした態度を示すものだが、その青年はその気配は微塵も見せなかった。昂然として廊下をまっすぐ歩くのだ。
〈あれはうらやましいな。無責任で〉
医師や看護婦から、病状の質問を受ける。たとえば、
「昨夜はよく眠れたかね」