Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
上体を前後に振ってみると頭の中がごろごろ言うのが面白くてゆらゆらしていると、小さな女中がちょこちょこ私の前あたりにやって来たと思ったら、べったり横ずわりして、横の文科の学生に話しかけた。
「今日はずいぶん泣いたわね」
私が横眼で見たら、その男が照れるというような恰好をして見せた。それがあまりわざとらしいので、私は我慢が出来ないほどであった。厭な顔をしているな、と私は思った。この男に良く似た顔を私は小学生の時分に、福岡の水族館で見たことがある。女中が下司な調子でそれを冷かした。悲しいのも無理ないわね。ほの字だもの。
ほの字か何か知らないが、先刻まで泣いていたという男が今、へらへらと酒を飲んでいる気持を私ははかりかねた。人の心は不思議だよと、心の中で節をつけて私は歌ってみた。今泣いた鴉がもう笑うた。泣こうが笑おうが、どうでもいいような気持になり始めた。私は盃を続けて飲みほした。
冗談のやりとりしていた隣の学生がひょっと真面目くさった顔になって言い出した。
「僕は菊子さんを可哀そうだと思うよ」
「そうだわねえ」
「あんなに仲が良かったんだから、ほんとに悲しいだろうね」