Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
こいつは俺の影だ! 私は不味い莨をふかしながら、煙が空気の中に消えて行くのをじっと見ていた。いろいろなものが私の肩に一つ一つつみかさなって行く。そいつらは蝙蝠のように私の首筋に鋭い爪を立てようとしているのだ。私は莨を捨て、窓をあけ放ったまま足を忍ばせて部屋を出て行った。
本郷台から嶮しい坂を下りて餌差町の電車線路を横ぎり、小石川界隈のごみごみした路を私は無茶苦茶に歩き廻った。歩き廻ることで色んな事を胡麻化そうとしながら、矢張り胸が重苦しかった。何か砂利のようなものが脚につまって、それが私の歩みを阻むようであった。大通りを避けて見知らぬ露地から露地へ私は蹣跚と歩き廻った。見覚えのある路を何度も通った。
日が短いので黄昏の色がもはや巷にしのび寄って来た。魚屋で鰺を買う内儀さん、自転車に乗って急ぐ小僧、巷全体が物の臭いを立てながら傾斜している露地うらや空地の侘しい明るさの中で、少女達が縄飛びしたり、しゃがんで地面に人形の絵を書いたりしている。何でも無い風景だけれど、思いがけず涙が浮んで来た。また残酷な痴想が鋭く湧き起ったりする。身体が疲れているので肉体とは関係なく、唯心の中で激しい欲望が荒れ狂うのを私は感じた。