Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
「君にも、子供がいるのだろう」
「ときどき練習機の編隊が飛んで行きますね。あれも特攻隊でしょう」
「ああ。――無茶だよ」
男の顔は、光線の加減か土色に見えた。ひどく大儀そうだった。
「身体には、注意しなくてはいけないよ。壕生活はこたえるから」
「鹿児島には、昔、土蜘味という種族がいたらしいですね。熊襲みたいな。やはり私達と同じで、洞窟に住んでいた」
「君は、東京かね」
「もう亡んでしまったんですね。弱い種族だったに違いないですよ」
「蝉が、ずいぶんふえたね。ほんとにうるさい位だ」
熊蝉が、あちらこちらの樹に止って、ここを先途と鳴いていた。
「蝉? ああ、蝉のこと。法師蝉は、まだ今年は来ませんよ」
男は白い歯を見せて、神経質な笑い声を立てた。肩の辺の骨が細く、服の加減で、少年のような稚なさを見せている。何か漠然とした不安が、私をとらえた。男は、両掌を後頭部に組み、その儘うしろに寝ころがった。今日は、飛行機も来ないらしかった。低い声で男は話し出した。
「私はねえ、近頃、滅亡の美しさということを考えますよ」
しみじみとした、自分に言い聞かせるような声音であった。
「廃墟というものは、実に美しいですねえ」