Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
密林の中は自然に踏み固められた道がついていて、それを斜めに下ると地面は次第に湿気を帯びて来る。斜面の中腹には巨大な石が幾つも根を据えていて、径は危くその間を縫い、そこらあたりから密林がやや薄くなって来る。サンホセの盆地は此の山を降り切ったところから北方に拡がっているのだが、梢の切れ目に隠顕する湿地帯の彼方を、バンカを水牛に牽かせて三四人の男達がそれに乗りゆるゆると動いて行くのが見える。遠いから、それが兵隊か比島の農夫か判らない。サンホセ盆地の中央部に通ずる運河の水が、遠く一筋に鈍く光った。彼は歩を止め石を背にして振り返った。高城の顔に視線をおとしながら言った。
「今から直ぐ、花田軍医の処に行く。お前も来い」少し間を置いて「部隊長の命令で、花田は銃殺ときまった。但しこれは、誰にも言うな」
緊張の色が一寸高城の顔をかすめただけで、あとは普通の表情であった。白い歯を見せて笑ったようであった。
「はい。誰にも言いません」
「すぐ用意をととのえて、俺の小屋に来い」
敬礼して立ち去ろうとする高城の後姿に、宇治は追っかけて呼んだ。
「――拳銃を持って来い。そして身の廻りの大事なものも持って行け」