Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
それは前進陣地に近い山の中であった。それきりその飛行士は消息を絶ってしまったのである。捕えて情報を得る必要があるというので、くまなく探索したけれども行方が知れなかった。比島人の誰かがかくまっているに相違なかった。レイテの敗北の程度につれて比島人の心もようやく日本軍から離反して行くらしかった。米飛行士探索の命令が、宇治に与えられた。
ある夜宇治は、飛行士が降下した山の付近の部落にひそかに入って行った。真夜中すぎて二十二三夜の月が出ていたが、風物は蒼然とくらく湿地を貫く道だけが白く浮き上っていた。部落は戸数にして七八十軒である。その中の一軒だけがあかあかと灯をともし、あとの家は暗く眠りに入っていた。此のような時刻に灯をともすのは、此処等の農民の習慣から見て一応疑えば疑えた。宇治は拳銃をにぎりしめ、足音を忍ばせてその家に近づいて行った。バンガロオ風の造りの窓から、そっと彼は内部をうかがった。勿論米飛行士がその内にいるなどとは思っていなかった。むしろ彼にそんな行動を取らせたのはかりそめの好奇心であった。窓掛けの隙間から彼は家の内部を見わたした。
花田中尉がそこに居たのだ。