Japanische Klassiker mit Furigana
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
Lesen Sie 榎物語 (えのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.519 Zeichen · 67 Bildschirme
やがて足助はちから尽きたように頭を垂れた、「主人の娘と下男、身分も違うしとしがいもないことだが、私はおさわさまが好きだった」と彼は独り言のように呟いた、「だから、おさわさまにちょっかいをだすようなそぶりをする者があれば、私はだれかれなしにやっつけてやった、そんなやつはあることないこと旦那に云いつけて、みんなお屋敷から追っぱらってやったものだ」
さわは顔をひきしめた。足助の口ぶりには、執念といったような、暗い妖気がこもっているように感じられたからである。
「山津波のときは」と足助は放心したように呟き続けた、「おさわさまを伴れて逃げるつもりだった、山奥へ伴れて逃げて、そこでいっしょにくらそうと思った、もうちっとのところでその望みがかなうところだった」
「あたしはもう片づけなければなりません」とさわは立ちあがった、「どうかもうお帰りになって下さい」
足助はわれに返って、吃驚したようにさわを見あげ、たいぎそうに立ちあがると、痺れた脛を、力のない手つきで揉んだり叩いたりした。
「あなたは本当におさわさんじゃないのですか」と彼はねばり強く訊いた、「本当に人違いですか」