Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
「それはおまえの肚ひとつだ」
「私はもう死んだ人間も同様です」
「話しを聞くか」
「はい」と達弥は答えた。
「ではもっと寄れ」と甲斐が云った。
達弥は涙をぬぐい、膝で前へとすすみ出た。
話しは半刻あまりかかった。甲斐はうちあけて語った。達弥は初め驚愕した。甲斐は、おまえのほかにたのむ者はないと云い、達弥は哀訴した。それだけはできません。むしろいま自殺させて下さい、と云った。甲斐は辛抱づよかった。藩家の将来にかかっている複雑な問題と、自分の立場の微妙な困難さを語り、彼に助力を求めた。
侍にとって「忠死」が本望であることにまちがいはない。しかし侍の「道」のためには、ときに不忠不臣の名も甘受しなければならぬばあいがある。自分もその覚悟だから、おまえも自分に助力してくれ。甲斐は、繰り返してそう云った。
達弥はついに承知した。
「おれを憎め」と甲斐は云った、「おれのたのみは無法なものだ、しかし、どうしてもそうしなければならない、ということはわかってくれるだろう」
「はい」と達弥は頭を垂れた。
「おまえのほかにも、幾人か、同じような役を受持ってもらわなければならぬと思う、こういうとき侍に生れあわせ、おれのような主人を持ったのが不運だった、おれを憎め、おれを恨め、だが、役目だけは果してくれ」