Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
「いいからいらっしゃい」とお久米は云った、「あたしあんたを怒らせるつもりはないわ、でもおかしいわねえ、あんたって人はずいぶんすご腕なくせに、まるでうぶなところもあるのね」
「あたしがすご腕ですって」
「いいからいらっしゃい」おみやの唇が片方へひきつった、お久米はやさしく云った、「さもないと、あんたの可愛い子に、もっといやなことを聞かれるかもしれなくってよ」
「あとで来るわ」とおみやは眼を伏せた、「怒らないでねお久米さん、あたし今朝はどうかしているのよ」
お久米は黙っていた。
おみやはもういちど、あとで来るわねえと云い、お久米に別れて自分の家へはいった。
新八はごろ寝をしていた。こっちの六帖で、着たなりで、一枚の夜具にくるまって、ちぢまって寝ていた。
雨戸が閉めてあるので、部屋の中は暗く、あけた襖からの片明りで、新八の顔はみじめなほど窶れてみえた。もとからひよわそうな顔だちであったが、このごろは色艶もめだってわるく、頬もこけたし、唇も乾いて、いつもかさかさしていた。お久米の云うとおり、ひと晩じゅう寝ずに待っていたのかもしれない。いまは眠っているのに、おちくぼんだ眼が少しあいており、額には深い皺がよっていた。