Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

「袴は黒にしよう」と甲斐が云った。

丹三郎は箪笥からその袴をとり出した。甲斐が云った。

「今朝の膳は誰と誰だ」

「蜂谷さまと伊東さま、里見さまのお三人です」

「では湯島のも出してやれ」

丹三郎は「はい」と答えた。

甲斐はそのまま内客の間へいった。おくみは茶菓を前にして、坐っていた。二十八という年よりは五つ六つも若くみえる。内庭の植込に、もうかなり高くなった朝の日光がつよくさしつけ、その反射で、おくみのふっくりとしたおもながな顔が、緑色に染っているようにみえた。

「これから朝の飯だ」甲斐は立ったまま云った、「いっしょに食べよう」

「どうなすったのですか」

おくみが云った。甲斐は穏やかに彼女を見た。

「いったい、どうなすったのですか」とおくみは云った。

「もう十五日にもなるのに、お顔もみせて下さらないなんて」

「出られなかったんだ」

「まる十五日もですか」

「飯を食べよう」と甲斐が云った。

「お待ち下さい、そのまえに申上げたいことがございます」

「あとにしてくれ」

「あたしのことではないんです。お国から奥さまがいらしったんです」とおくみが云った。甲斐の高い額に、はっきりと皺がよった、彼はけげんそうに、おくみの顔を見た。