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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

「いつも云うが、貴方にはかなわないところがある、原田さんには負けます、しかし私だって伊東七十郎ですからね、ほかのつんぼやめくら共と同じに考えないで下さい」

甲斐は「覚えておこう」と云った。

甲斐が居間へはいると惣左衛門が鳩古堂の箱を持って来て渡した。

「米谷さまのお言葉にはおどろきました」と惣左衛門が云った。甲斐は「うん」と頷きながら、箱をあけて、斑入りの軸に、虎毛の穂の付いた筆を取った。

「あの噂は私なども初耳ですが、どこから出たものでしょうか」

「噂とは、――」

「一ノ関さまに推されて、国老になられるということです」

甲斐は筆の軸を静かに抜き、その軸の中から、小さく巻いた薄葉紙を取出すと、注意ぶかく机の上でひろげながら、当然のことのように云った。

「むろん、涌谷さまだ」

惣左衛門は腑におちない顔をした。甲斐は密書を読み、それをすぐ、火桶の火にくべながら、ふと太息をついた。

「米谷どのは上府するまえに、涌谷へ寄られたのだろう、そのとき涌谷さまが話されたのだと思う」

「そう致しますと」

「種子を蒔かれたらしいな」と甲斐は云った。

惣左衛門はようやくわかったとみえ、いたましそうに主人のうしろ姿を見た。