Japanische Klassiker mit Furigana
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はし
橋
池谷 信三郎
Lesen Sie 橋 (はし) von 池谷 信三郎 (いけたにしんざぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.108 Zeichen · 37 Bildschirme
無数の後姿が、僕の前をどんどん追い越して、重なり合って、妙に淋しい背中の形を僕の瞳に残しながら、皆んなすいすいと消えて行くのです。街はひどい霧でね、その中にけたたましい電車の鈴です自動車の頭灯です。光りが廻ると、その輪の中にうようよと音もなく蠢く、ちょうど海の底の魚群のように、人、人、人、人、……僕が眼を上げると、ほら、あすこのデパアトメントストオアね、もう店を閉じて灯火は消えているのです。建物の輪廓が靄の中に溶けこんで、まるで空との境が解らないのです。すると、ぽつんと思いがけない高い所に、たった一つ、灯がはいっているのです。あすこの事務室で、きっと残務をとっている人々なのでしょう。僕は、……
――まあ、お饒舌りね、あんたは。どうかしてるんじゃない、今日?
――どうしてです。
――だって、だって眼にいっぱい涙をためて。
――霧ですよ。霧が睫毛にたまったのです。
――あなたは、もう私と会ってくださらないおつもりなの?
――だって君は、どうしても、橋の向うへ僕を連れていってくれないんですもの。だから、……
女はきゅうに黙ってしまった。彼女の顔に青いメランコリヤが、湖の面を走る雲の影のように動いて行った。