Japanische Klassiker mit Furigana
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はし
橋
池谷 信三郎
Lesen Sie 橋 (はし) von 池谷 信三郎 (いけたにしんざぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.108 Zeichen · 37 Bildschirme
階下にいる家内にちょっと見せてくる、と彼が言った。いかにも自然なその言いぶりや挙動で、店員は別に怪しみもしなかった。では、この御洋服は箱にお入れして、出口のお買上品引渡所へお廻しいたしておきますから、……
ところが、エレベーターはそのまま、すうっと一番下まで下りてしまった。無数の人に交って、ゆっくりと彼は街に吐きだされて行った。
もう灯の入った夕暮の街を歩きながら彼は考えた。俺は会社で一日八時間、この国の生産を人口で割っただけの仕事は充分すぎるほどしている。だから、この国の贅沢を人口で割っただけの事をしてもいいわけだ。電車の中の公衆道徳が、個人の実行によって完成されて行くように、俺のモーニングも、……それから、彼はぽかんとして、シイカがいつもハンケチを、左の手首のところに巻きつけていることを考えていた。
今日はホテルで会う約束だった。シイカが部屋をとっといてくれる約束だった。
――蒸すわね、スチイムが。
そう言ってシイカが窓を開けた。そのままぼんやりと、低い空の靄の中に、無数の灯火が溶けている街の風景を見下しながら、彼女がいつものマズルカを口吟んだ。