Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はるはばしゃにのって

機械・春は馬車に乗って

横光 利一

Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme

Aozora Bunko

晴れた日など若葉の間を真直ぐに前方を見ながら来る二人の満ち足りたような姿は、遠くから見ていても稀(まれ)に見る幸福そうな良い感じだった。今までからも私は楽しげな夫婦を幾つも見て来ているが、この二人ほど、他所見(よそみ)をせず、壊(こわ)れぬ幸福をしっかり互に守っているらしい夫婦はあまり見なかったのでそれ以来、特に私は注意するようになった。話す機会は一度もなかったが、間もなく良人の方は陸軍刑務所の看守で朝毎に自転車で役所へ通うということや、細君の方は附近の娘たちに縫物(ぬいもの)を教えているということなど、だんだん分って来ると、またその特殊な二人の生活が一層私の興味を動かした。

主人の方の名を加藤高次郎といい、私の家から二町ほど離れたある伯爵の庭の中の小さな家にいる人だということも、出入りの八百屋の小僧の口から私は知ることが出来た。またその小僧の口から、八百屋の老いた主婦が加藤高次郎氏の立派な姿に、朝ごとにぼんやり見惚(みと)れているとまで附け加えて語ったことがある。とにかく、もう老年の八百屋の主婦が、朝毎にペダルを踏んで通る高次郎氏の姿に見惚れるというようなことは、私もともに無理なく頷(うなず)くことが出来るのである。