Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
菜の花と麦の青葉とで錦を敷いたような島々がまるで霞の奥に浮いているように見える。そのうち船がある小さな島を右舷に見てその磯から十町とは離れないところを通るので僕は欄に寄り何心なくその島をながめていた。山の根がたのかしこここに背の低い松が小杜を作っているばかりで、見たところ畑もなく家らしいものも見えない。しんとしてさびしい磯の退潮の痕が日に輝って、小さな波が水際をもてあそんでいるらしく長い線が白刃のように光っては消えている。無人島でない事はその山よりも高い空で雲雀が啼いているのが微かに聞こえるのでわかる。田畑ある島と知れけりあげ雲雀、これは僕の老父の句であるが、山のむこうには人家があるに相違ないと僕は思うた。と見るうち退潮の痕の日に輝っているところに一人の人がいるのが目についた。たしかに男である、また小供でもない。何かしきりに拾っては籠か桶かに入れているらしい。二三歩あるいてはしゃがみ、そして何か拾っている。自分はこのさびしい島かげの小さな磯を漁っているこの人をじっとながめていた。船が進むにつれて人影が黒い点のようになってしまった、そのうち磯も山も島全体が霞のかなたに消えてしまった。