Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
』
この時、風一陣、窓に近き栗の梢を魔ありて揉みしようなる音す。青年は筆を止めて耳傾くるさまなりしが、
『わが力いずこにありや。口渇きし者の叫ぶ声を聞け、風にもまるる枯葉の音を聞け。君なくしてなお事業と叫ぶわが声はこれなり。声かれ血涸れ涙涸れてしかして成し遂ぐるわが事業こそ見物なりしに。ああされど今や君はわが力なり。あらず、君を思うわが深き深き情けこそわが将来の真の力なれ。あらず。われを思う君が深き高き清き情けこそわが将来の血なれ。この血は地の底を流るる春の泉なり。草も木も命をここに養い、花もこれより開き、実を結ぶもその甘き汁はすなわちこの泉なり。こは詩的形容にあらず、君よ今わが現に感ずるところなり。
昨夜までは、わが洋行も事業の名をかりて自ら欺く逃走なりき。かしこは墳墓なりき。今やしからず。今朝より君が来宅までわが近郊の散歩は濁水暫時地を潜りし時のごとし。こはわが荒き感情の漉されし時なり。再び噴出せし今は清き甘き泉となりぬ。われは勇みてこの行に上るべし。望みは遠し、されど光のごとく明るし。熱血、身うちに躍る、これわが健康の徴ならずや。みな君が賜なり。