Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
風流気はありながら店にすわっていて塩焼く烟の見ゆるだけにすぐもうけの方に思い付くとはよくよくの事と親類縁者も今では意見する者なく、店は女房まかせ、これを助けて働く者はお絹お常とて一人は主人の姪、一人は女房の姪、お絹はやせ形の年上、お常は丸く肥りて色白く、都ならば看板娘の役なれどこの二人は衣装にも振りにも頓着なく、糯米を磨ぐことから小豆を煮ること餅を舂くことまで男のように働き、それで苦情一つ言わずいやな顔一つせず客にはよけいなお世辞の空笑いできぬ代わり愛相よく茶もくんで出す、何を楽しみでかくも働くことかと問われそうで問う人もなく、感心な女とほめられそうで別に評判にも上らず、『いつもご精が出ます』くらいの定まり文句の挨拶をかけられ『どういたしまして』と軽く応えてすぐ鼻唄に移る、昨日も今日もかくのごとく、かくて春去り秋逝くとはさすがにのどかなる田舎なりけり。
茶店のことゆえ夜に入れば商売なく、冬ならば宵から戸を閉めてしまうなれど夏はそうもできず、置座を店の向こう側なる田のそばまで出しての夕涼み、お絹お常もこの時ばかりは全くの用なし主人の姪らしく、八時過ぎには何も片づけてしまい九時前には湯を済まして白地の浴衣に着かえ団扇を持って置座に出たところやはりどことなく艶かしく年ごろの娘なり。