Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれえぬひとびと

武蔵野

国木田 独歩

Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme

Aozora Bunko

そのまま階下にゆけり。

朝の事をおわるや急ぎて母上の室を入れば、母上と叔母とは火鉢を中にして対したまい、叔母はわが顔を見て物をものたまい得ず、ハンケチにて眼ふきふき一通の手紙を渡したまえり。これ二郎が手紙なり。

文は短けれど読みおわりて繰り返す時わが手振るい涙たばしり落ちぬ、今貴嬢にこの文を写して送らん要あらず、ただ二郎は今朝夜明けぬ先に品川なる船に乗り込みて直ちに出帆せりといわば足りなん。この身にはもはや要なき品なれば君がもとに届けぬ、君いかようにもなしたまえと書き添えて貴嬢の写真一枚はさみあり、こは貴嬢がこの正月五日御地より送りたまいし物の由。さてわれにも要なき品なれば貴嬢に送り返すべきなれど思う節あればしばしわが手もとに秘め置く事といたしぬ。無益とは知りつつも、車を駆りて品川にゆき二郎が船をもとめたれど見当たらぬも理なり、問屋の者に聞けば第二号南洋丸は今朝四時に出帆せりとの事なれば。

ああ哀れなる二郎、われらまたいつ再びあうべきぞ。貴嬢はわれもはやこの一通にて厭き足りぬと思いたもうや。あらず、あらず、時は必ず来たるべし――

大空隈なく晴れ都の空は煤煙たなびき、沖には真帆片帆白く、房総の陸地鮮やかに見ゆ、射す日影、そよぐ潮風、げに春ゆきて夏来たりぬ、楽しかるべき夏来たりぬ、ただわれらの春の永久に逝き