Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
河霧
上田豊吉がその故郷を出たのは今よりおおよそ二十年ばかり前のことであった。
その時かれは二十二歳であったが、郷党みな彼が前途の成功を卜してその門出を祝した。
『大いなる事業』ちょう言葉の宮の壮麗しき台を金色の霧の裡に描いて、かれはその古き城下を立ち出で、大阪京都をも見ないで直ちに東京へ乗り込んだ。
故郷の朋友親籍兄弟、みなその安着の報を得て祝し、さらにかれが成功を語り合った。
しかるに、ただ一人、『杉の杜のひげ』とあだ名せられて本名は並木善兵衛という老人のみが次のごとくに言った。
『豊吉が何をしでかすものぞ、五年十年のうちにはきっと蒼くなって帰って来るから見ていろ。』
『なぜ?』その席にいた豊吉の友が問うた。
老人は例の雪のような髭髯をひねくりながらさみしそうに悲しそうに、意地のわるそうに笑ったばかりで何とも答えなかった。
そこで少しばかりこの老人の事を話して置くが、「杉の杜のひげ」と言われてその名が通っているだけ、岩――のものでそのころこの奇体な老人を知らぬ者はないほどであった。
髭髯が雪のように白いところからそのあだ名を得たとはいうものの小さなきたならしい老人で、そのころ七十いくつとかでもすこぶる強壮なこつこつした体格であった。