Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しのぜんご

死の前後

豊島 与志雄

Lesen Sie 死の前後 (しのぜんご) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.273 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

無理もありません、まだ若いんですから……。わたしくらいの年になると、役にたってほっとしたという気持が、どんなものだか、ようく分りますよ。そりゃあわたしだって、一日二日は考えました。考えたからって、決して惜しがったわけじゃあありません。ほんとに役にたつかどうか、それが肝腎ですからね。十年間の苦労でしょう。それが役にたてば、誰だってほっとしますよ。もう何にも考えることはありません。わたしはあの娘のために、ほんとに仕合せですよ。」

だが、頭をふりふり、そんなお饒舌をしながら、彼女は泣いているのだった。酒をのんで、眼がどんよりしてくると、足がしびれたらしく、膝頭を両手でもみ初めた。その時にはもう、若い女中はうとうとしていた。おしげは折箱と酒瓶とを片附けて、押入のなかに頭をつきこんで、行李のなかをかきまわして、みち子の美しい芸妓姿の写真を、幾枚も、また改めて、彼女に見せるのだった。それから、床を並べて寝てからも、彼女が眠ってしまうまで、あかずにそれらの写真をみていた……。

若い女中のそうした話が、島村夫妻の心を惹いた。殊には千円余りだと額面まで聞きかじっていた貯金を、そのままにしておくわけにはいかないように考えられた。