Japanische Klassiker mit Furigana
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しのふちより
死の淵より
高見 順
Lesen Sie 死の淵より (しのふちより) von 高見 順 (たかみじゅん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.084 Zeichen · 38 Bildschirme
二
三
過去の空間
二
祈り
それは宝石のように小さな函にしまえる 小さな心にもしまえる
三
カエデの赤い芽
空をめざす小さな赤い手の群 祈りと知らない祈りの姿は美しい
過去の空間
手ですくった砂が
痩せ細った指のすきまから洩れるように
時間がざらざらと私からこぼれる
残りすくない大事な時間が
そのかわり私の前にいくら君が立ちはだかっても
死の世界にしては明るすぎる向うの景色が丸見えだ
そのかわり君が敵か味方か私にはわからないが
なぜ君は君の見ている景色を私に見せまいとするのか
たしかに死の世界ではないのだ
しかしそこに人はひとりも存在しない
かつては客が大勢いたらしいのに今は去って
そのかわりたくさんの盃がにぎやかに残されている
飲み残しの酒を今なおたたえた盃
その周囲にからの盃が倒れている
杯盤狼藉のわびしい華やかさ
ころがっている盃のほうが多いのだ
私にははっきりわかるのだが
からの盃は盃が倒れたので酒がからになったのではない
人がぞんぶんに飲みほしたのち盃を投げたのだ
乾盃のあと床にたたきつけられた盃もある
なぜあと片づけをしないのだろう
宴のはじめはさぞかし楽しかったにちがいない