Japanische Klassiker mit Furigana
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はは
母
Lesen Sie 母 (はは) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.551 Zeichen · 18 Bildschirme
が、その声が聞えないのか、男は手近の灰皿へ、巻煙草の灰を落したきり、新聞から眼さえ挙げようとしない。
「あなた。」
女はもう一度声をかけた。その癖女自身の眼もじっと針の上に止まっている。「何だい。」
男は幾分うるさそうに、丸々と肥った、口髭の短い、活動家らしい頭を擡げた。
「この部屋ね、――この部屋は変えちゃいけなくって?」
「部屋を変える? だってここへはやっと昨夜、引っ越して来たばかりじゃないか?」
男の顔はけげんそうだった。
「引っ越して来たばかりでも。――前の部屋ならば明いているでしょう?」
男はかれこれ二週間ばかり、彼等が窮屈な思いをして来た、日当りの悪い三階の部屋が一瞬間眼の前に見えるような気がした。――塗りの剥げた窓側の壁には、色の変った畳の上に更紗の窓掛けが垂れ下っている。その窓にはいつ水をやったか、花の乏しい天竺葵が、薄い埃をかぶっている。おまけに窓の外を見ると、始終ごみごみした横町に、麦藁帽をかぶった支那の車夫が、所在なさそうにうろついている。………
「だがお前はあの部屋にいるのは、嫌だ嫌だと云っていたじゃないか?」
「ええ。それでもここへ来て見たら、急にまたこの部屋が嫌になったんですもの。