Japanische Klassiker mit Furigana
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はは
母
Lesen Sie 母 (はは) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.551 Zeichen · 18 Bildschirme
」
女は針の手をやめると、もの憂そうに顔を挙げて見せた。眉の迫った、眼の切れの長い、感じの鋭そうな顔だちである。が、眼のまわりの暈を見ても、何か苦労を堪えている事は、多少想像が出来ないでもない。そう云えば病的な気がするくらい、米噛みにも静脈が浮き出している。
「ね、好いでしょう。……いけなくて?」
「しかし前の部屋よりは、広くもあるし居心も好いし、不足を云う理由はないんだから、――それとも何か嫌な事があるのかい?」
「何って事はないんですけれど。……」
女はちょいとためらったものの、それ以上立ち入っては答えなかった。が、もう一度念を押すように、同じ言葉を繰り返した。
「いけなくって、どうしても?」
今度は男が新聞の上へ煙草の煙を吹きかけたぎり、好いとも悪いとも答えなかった。
部屋の中はまたひっそりになった。ただ外では不相変、休みのない雨の音がしている。
「春雨やか、――」
男はしばらくたった後、ごろりと仰向きに寝転ぶと、独り言のようにこう云った。
「蕪湖住みをするようになったら、発句でも一つ始めるかな。」
女は何とも返事をせずに、縫物の手を動かしている。
「蕪湖もそんなに悪い所じゃないぜ。