Japanische Klassiker mit Furigana
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みとばいふ
水戸梅譜
山本 周五郎
Lesen Sie 水戸梅譜 (みとばいふ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.607 Zeichen · 25 Bildschirme
な……この君をおいてほかに御しゅくんはないぞ」言葉のすえは嗚咽にかすれた、甚四郎は手で面を覆った。役人たちもみな深く頭を垂れた。「父はたち戻りませんでした」五郎兵衛は涙を押えてつづけた、「母はわたくしに着替えをさせ、仏壇の前にて、瓶子かわらけをとり揃え、お館さまよりの盃と思えと申しまして、恐れながら主従かための、かげの盃をつかまつりました、下賤の身をもって、御家臣なりと申しました仔細はかようでございます、まことに恐れ入り奉りまする」
光圀は胸いっぱいの感動にうたれていた。人間の心がこれほどひとすじにつき詰められるものだろうか、この君こそと思いきわめ、まずおのれの命を抛って子孫の生きる道を示す。戦場ならかくべつだが、泰平の世にこれだけの覚悟をつけるのはたやすいことではない。――かえすがえすも惜しい者を殺した。まざまざと十六年まえの後悔を思いうかべながら、光圀はしずかにうなずいた。
「それでよく仔細がわかった、数年前より参覲の上り下りに、供をしてまいったのもそのほうであろうな」
「恐れ入り奉ります」彼は面を伏せた。
「そのほうの父を死なせたのは余の不明であった、ゆるせ……」