Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
彼はどこまでも嘘で押し通すよりほかはないので、苦しいながらも前の誓い――偽りの誓いをまた繰り返した。
「さっきもいう通り、来年の三月には国へ帰って身請けの金を持って来る」
「ほんとうざますか」
「嘘はつかない」
次郎左衛門は息が詰まるほどに苦しくなった。今までは八橋が自分をだましていたのであるが、今は自分が八橋をだましているのである。だまされている身よりも、だましている身の方がどのくらい切ないか判らないと、彼はつくづく情けなくなった。彼は夜の明けないうちに逃げ出したくなって来た。
八橋の方では容易に帰そうとはしなかった。彼女は全く栄之丞を見捨てた証拠だといって、掛守の中から男の起請を出して見せた。
「この通り、よく見ておくんなんし」
彼女はその起請をずたずたに引き裂いて、行燈の火にあてると、紅い小さい焔がへらへらと燃えあがった。彼女は更にその火を枕もとの手あぶりに投げ込むと、焔はぱっと大きく燃えて、見る見るうちに薄白い灰となった。
恋の果てはこうしたものかと思うと、次郎左衛門はなんだか果敢ないような心持ちにもなった。それと同時に子供が蟻やみみずを踏み殺した時のような、一種の残忍な愉快と誇りを感じた。