Japanische Klassiker mit Furigana
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あざらしとう
海豹島
久生 十蘭
Lesen Sie 海豹島 (あざらしとう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.311 Zeichen · 48 Bildschirme
美しい肢態をもった私の愛人は、前鰭でやさしく私を抱えたり、私の胸にすべっこい丸い顔を凭せかけたりした。私は砂浜にはねあげられた銀色の魚を喰べて充ちたりた気持になり、膃肭獣の言葉でながながとしゃべった。
煖炉の火はすっかり消え落ち、部屋の中は薄暗くなっていた。私は起きあがって蝋燭に火をともし、本箱の端に腰をかけて腕組をした。適度の睡気と冷気は過敏な神経をほどよく鎮静してくれ、冷理にかえるにつれて、輪廻説の影響による転生だの転身だのということは、みなとるにも足らぬ妄説にすぎないと考えるようになった。
背嚢から小さな手鏡を出し、蝋燭の灯に近づけて顔をうつして見たが、そこにうつしだされたのは、熱にうかされたような、秀麗とはいいがたい平凡極まるいつもの顔で、昼すぎ、硝子窓にうつったゾッとするような異様な顔は、出来の悪いガラスの歪や気泡の悪戯なのであった。
なんとしても馬鹿げた話だから、娘のことはもう考えないことにきめたが、そのとき、ふとした示唆がこの謎を解析してくれた。
この島の特質上、石膏末、コロジウム繃帯、縫合針、義眼など、剥製に必要な器具材料が、なにひとつ欠けることなく取揃えられてあり、そして狭山は熟練した剥皮夫である。